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『Abema』スタッフに聞く、ネットテレビと地上波の根本的な差とは?

 先ごろ、人気バラエティー番組『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)終了の話題を受け、ダウンタウンの松本人志が「とんがったものを作っていくのは不可能に近い」「クレームのリスクも高い」と『ワイドナショー』(同)で発言し話題に。一方、ネットメディアであるAbemaTVで『72時間ホンネテレビ』が配信され大きな渦を巻き起こしたように、ネットテレビの勢いが加速している。そこで、AbemaTVのジェネラルプロデューサー・宮本博行氏に、ネットメディアと地上波における番組制作の“棲み分け”が今後どうなっていくかについて聞いた。

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■Abemaの番組では、作り手が「やりたいことをやっている」

 地上波のバラエティー番組作りに危機感を募らせる松本人志は、Twitterでも「バラエティー番組はいよいよ大変だ」「バラエティー番組はスピード違反で叱られる時がある(原文ママ)」と投稿。一方、ネットメディアを見ると、芸人や制作スタッフが“やりたいことをやっている”ようにも見える。実際、芸人から「こういう番組をやりたい」と提案されるケースもあると宮本氏は語る。「バナナマンの日村勇紀さんが体を張って"新定番"を開拓していく『日村がゆく』(AbemaTV)という番組は、情報要素はまったくのゼロで“お笑い要素”だけ(笑)。多分、この内容だと地上波では放送できません(笑)。そうした意味でも、作り手が笑いだけを追求した“やりたいことをやっている”番組」と同氏。他にも、“ブスとは何なのか”をテーマに「ブス」の本音をお届けする「おぎやはぎの『ブス』テレビ」などがあり、AbemaTVの番組作りにはネットメディアらしい“振り切り感”が見える。

■BPOへのクレームなど、“規制”に縛られる地上波バラエティーの現状

 一方地上波では、今年の『R-1ぐらんぷり』(フジテレビ系)での優勝をはじめ、飛ぶ鳥を落とす勢いだった芸人・アキラ100%の“裸芸”に対し、放送倫理・番組向上機構(以下・BPO)にクレームが寄せられ物議を醸した。この件は、地上波における“規制”の現状を端的に示している。それに比べて『日村がゆく』は、ネットユーザーから「地上波では絶対にムリ」「下ネタすぎて笑える」などと支持され、その尖った番組手法は地上波とは一線を画している。同番組について宮本氏は、「この内容で1時間番組は挑戦です(笑)。しかも毎回日村さんはアソコを見せてますからね。自慢じゃないですが、多分200本位のアソコがあったとして、僕は日村さんのアソコを見分けられますよ」と笑う。他にも、チュートリアル・徳井義実がMCを務める『DTテレビ』は出色の内容。これは、モテモテのアイドルも、クールなダンサーも、イケメンのスターも、みーんな最初は童貞だったよね。そんな、童貞の、童貞による、童貞のための番組。こうした“下ネタ”路線からは清々しささえ漂う。

 しかし、90年代の地上波では『志村けんのバカ殿様』(フジテレビ系)、『ギルガメッシュないと』(TV東京系)など下ネタ満載の番組も普通に放送されていた。「下ネタを笑いに変えるっていう手法は、それこそ僕なんかが小さい頃に観ていたテレビ番組の憧れ。ただ、下ネタだけだと能がありません。それをどう“笑い”に変えるかが大事だと考えています」と宮本氏は解説する。

■“ネット番組は予算が潤沢”は間違い!? 予算の集中投下で違いを産み出す

 ネットメディアの今を語る際、地上波と遜色ない、もしくはそれ以上の“潤沢な制作費”もポイントのひとつ。実際、Amazonプライムの『戦闘車』など、膨大な予算をかけた番組が話題に。地上波とネット番組の気になる予算事情について宮本氏に聞くと「他のネットメディアの場合、AbemaTVのように編成表があって、アニメやドラマを毎日放送するというわけではありません。そのため、ひとつの番組に予算を集中投下出来る利点があるのでは」と分析する。つまり、AbemaTVも地上波と同様で、毎日のレギュラー番組がある中で特番をやるため、いわゆる『戦闘車』や『ドキュメンタル』(共にAmazonプライム)のように、予算を投入できる番組は限られるようだ。事実、宮本氏が手掛ける『日村がゆく』の制作費はかなり安いことでも知られる。こうした点からから、ネット番組の制作には“予算をかけて好きなことをやる”場合と、“予算がなくても好きな番組をやる”という2つの手法があることが見えてくる。

 今、ネット番組に比べて地上波は番組作りでも“配慮”を求められることが多い。しかし、その点について宮本氏は、民放とネット番組ではそもそも与えられた役割が異なると強調する。「まず、民放には“公共性”が求められるということ、そして“伝える義務”というものがあって、そうした中で工夫しながら頑張っている。逆にAbemaTVはチャレンジしていく立場なので、『観る人がいないところを観せていく』という事を今やっている。そう考えると、むしろ地上波と良い補完関係があると思います」